精神科との出会い。偏見だらけだった僕が「ここで働きたい」と思えた理由
こんにちは!「トラパパ@サバイバルナース」です!🐾
前編では、
主任として心も体も限界を迎え、
円形脱毛症になるほど追い詰められた僕が、
家族を守るため、
精神科という未知の世界へ挑戦する決断をしたところまでお話しました。
前回記事はこちら。

「正直、この時は期待より不安の方が大きかったです。」
精神科なんて学生以来。
実習の記憶もほとんどなく、
「怖い患者さんが多いんじゃないか。」
「暴力とか大丈夫なのかな。」
「看護技術が落ちてしまうんじゃないか。」
そんなイメージばかりが頭をよぎっていました。
でも——
その不安は、
初出勤の日から少しずつ変わっていきました。
初めての精神科勤務
初出勤の日。
何度転職しても、
新しい職場は緊張します。

更衣室へ向かい、
病棟へ案内されました。
そこで最初に驚いたこと。
男性看護師が本当に多い。
主任も男性。
師長も男性。
プリセプターも男性。
病棟を見渡すと、
スタッフの半分近くが男性看護師でした。
「えっ…こんなにいるの?」
正直びっくりしました。
今までの職場では、
男性看護師は数人。
年齢が上がるほど男性は減り、
いつも女性ばかりの中で働いていました。
だから、
年上の男性看護師がたくさん働いている光景は、
ものすごく安心感がありました。

「『自分だけじゃない』と思えた瞬間でした。」
病棟は想像と全然違った
病棟を案内してもらい、
まず驚いたのは、
点滴がほとんどないこと。
急性期では、
点滴
採血
輸血
急変
ナースコール
毎日走り回っていました。
しかし精神科では、
医療行為自体は少なく、
患者さんと関わる時間が圧倒的に多い。
もちろん点滴がゼロではありません。
でも、
看護の中心は
“治療”ではなく”生活”
でした。
保護室を見た時の衝撃
案内の途中、
保護室も見せてもらいました。
古い病院だったこともあり、
そこには鉄格子。
学生以来、
初めて見る景色でした。
正直、
「刑務所みたいだ…」
そう感じたことを覚えています。
精神科の現実を目の当たりにし、
少し緊張した瞬間でもありました。
患者さんは怖くなかった

でも、
もっと驚いたことがあります。
患者さん達です。
病棟へ入ると、
患者さんの方から
「新人さん?」
「よろしくね。」
「どこから来たの?」
と話しかけてくれました。
僕が勝手に持っていた
「怖い」
「何をされるかわからない」
そんなイメージとは全く違いました。
もちろん、
幻覚や妄想が強い患者さんもいます。
何十年も入院している方もいます。
でも、
だから怖いわけではありません。
むしろ、
普通に笑って、
普通に会話して、
普通に生活している方がほとんどでした。
一般病院時代、
「精神科は後ろから叩かれるから気を付けろ。」
そんな話を聞いたこともありました。
でも、
実際に働いてみると、
そんな単純な世界ではありませんでした。
今ならはっきり言えます。
精神科には、まだまだ偏見があります。

「実際に働くまで、僕自身も偏見を持っていました。」
「わからない」が言える職場
もう一つ印象的だったことがあります。
それは、
スタッフも医師も
「わからない。」
と普通に言うことでした。
精神科一筋の先生は、
内科的なことは詳しくありません。
看護師も、
急変対応の経験が少ない人もいます。
だからこそ、
僕が一般病院で経験してきたことを
医師から質問されることもありました。
逆に、
精神科特有のことは
僕が何もわかりません。
そんな時、
みんなが笑いながら言うんです。
「経験してないんだから知らなくて当然だよ。」
「何でも聞いて。」
この空気が、
本当に心地よかった。
知らないことを責める人はいない。
一緒に考えてくれる。
そんな職場でした。
精神科は”心”を看る看護
働けば働くほど、
精神科看護の奥深さを感じました。
身体だけを見るのではありません。
患者さんの生活。
表情。
話し方。
歩き方。
目線。
ちょっとした変化。
数字では見えない変化を、
毎日観察する。
同じ病名でも、
症状は全く違います。
だからこそ、
一人ひとりを知ることが、
何より大切でした。
僕は少しずつ、
精神科看護の面白さに惹かれていきました。
初めて「精神科へ来て良かった」と思えた瞬間

精神科へ転職して、
そこで僕は、
忘れられない出来事に出会います。
まだ10代の女の子でした。
成人式を楽しみにしていたその子は、
病状が安定せず、
成人式へ参加できませんでした。
泣きながら、
悔しそうにしていた姿は、
同じくらいの年齢だった姪と重なり、
僕も胸が苦しくなりました。
そして、
退院前日の夜勤。
その子は眠れず、
ホールで一人座っていました。
「退院は嬉しい。」
「でもまた悪くなるのが怖い。」
「帰りたい。でも怖い。」
僕は、
何て声を掛ければいいかわかりませんでした。
すると一緒に夜勤だった先輩が、
優しくこう言いました。
「そんな不安を考えられるようになったんだね。」
「入院した頃は、そんなこと考えられる状態じゃなかったじゃん。」
「それだけ良くなったってことだよ。」
その子は、
少し笑って、
「それもそうか。」
と言って部屋へ戻りました。
翌日、
笑顔で退院していきました。
あの夜。
僕は思いました。
こんな言葉を掛けられる看護師になりたい。
精神科看護の本当の魅力を、
初めて知った瞬間でした。
この転職は間違っていなかった

主任手当がなくなり、
年収は少し下がりました。
でも、
後悔はありませんでした。
ナースコールに追われない。
夜勤でもしっかり仮眠が取れる。
残業はほとんどない。
男性看護師が多い。
子どもの急な体調不良でも、
「仕事は大丈夫だから。」
「子どものそばにいてあげて。」

「この一言で、この病院に来て本当に良かったと思いました。」
そう言って送り出してくれる。
家へ帰る時間も増え、
妻も、
「前より余裕ができたね。」
と笑ってくれるようになりました。
家族の笑顔が増えました。
僕も笑えるようになりました。
この転職は、
仕事を変えたのではありません。
人生そのものを変えた転職でした。
そう思っていました。
家族との時間を守れたのは「転職」という選択でした
僕は精神科へ転職したことで、
・残業ほぼなし
・男性看護師が多い
・夜勤の負担が軽い
・子育てへの理解
という環境を手に入れました。
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でも……

幸せな毎日は、
長くは続きませんでした。
精神科へ転職して半年。
仕事にも慣れ、
「ここなら長く働けそうだ。」
そう思い始めた頃でした。
突然、
全職員が集められます。
そこで理事長が放った、
たった一言。
「明日から経営母体が変わります。」
誰も知りませんでした。
師長も。
看護部長も。
医師ですら。
そこから始まったのは、
想像を絶する病院崩壊でした——。

