「精神科看護師って、一般病棟より楽なの?」
「残業が少ないって聞くけど、本当にきつくないの?」
「精神科に転職したいけど、患者さんとのトラブルや暴力が怖い……」
精神科への転職を考えている看護師さんの中には、こんな不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
こんにちは!
男性看護師のトラパパ@サバイバルナースです!🐾
僕はこれまで20年以上看護師として働き、急性期・回復期・精神科など複数の病院を経験してきました。
現在は慢性期の精神科病棟で働いています。
急性期から精神科へ転職した僕が感じるのは、
精神科にも、きついことはあります。
ただし、急性期とは「きつさの種類」が違うと感じています。
急性期のように検査や処置に追われることは少なくなりました。
始業前の情報収集もほとんどなく、残業せず時間通りに帰れる日が多い。
僕自身、精神科へ転職したことで、以前より家族との時間を大切にできるようになりました。
だからといって、
「精神科=楽な仕事」
とは思っていません。
患者さんとの距離が近いからこそ、人間関係に悩むことがあります。
好かれることもあれば、嫌われることもあります。
ときには妄想の対象になったり、暴言を受けたり、不穏・興奮状態の患者さんへの対応に怖さを感じたりすることもあります。
そして、一般病棟に比べて採血・点滴・医療処置などを行う機会が減る病棟では、身体管理や看護技術について不安を感じることもあります。
この記事では、急性期と精神科の両方を経験してきた僕が、
「精神科看護師の何がきついのか?」
を、実際に経験した出来事も交えながら正直にお話しします。
精神科への転職を考えている方に、良いところだけではなく、転職する前に知っておいてほしい現実まで伝えられたらと思います。

「僕は精神科に転職して家族との時間が増えました。でも、“楽そうだから”だけで精神科を選ぶのはおすすめしません。」
- 精神科看護師はきつい?最初に僕の結論
- 精神科看護師が「きつい」と感じる7つのこと
- ここまでのまとめ|精神科の「きつさ」は急性期とは種類が違う
- それでも僕が精神科を辞めない理由
- 「精神科がきつい」と感じたときに考えてほしいこと
- 精神科への転職で後悔しないために確認したい7つのこと
- 自分で聞きにくい情報は、転職エージェントを使って確認する
- まとめ|精神科看護師もきつい。でも「自分に合う職場」なら働き方は変えられる
精神科看護師はきつい?最初に僕の結論
結論から言うと、
精神科看護師にも、きついことはあります。
でも僕は、
「精神科だからきつい」
「急性期だからきつい」
と単純に分けられるものではないと思っています。
僕が急性期で働いていた頃は、検査・処置・入退院・急変などに追われ、常に時間を気にしながら働いていました。
精神科へ来てからは、そのような忙しさはかなり減りました。
一方で増えたのが、
患者さんとの関係性について考える時間です。
精神科では、患者さんが長期間入院していることも珍しくありません。
退院先がなかなか決まらず、長い期間を病院で生活している方もいます。
そのため、患者さんと看護師の関係も一般病棟以上に長く、濃くなりやすいと僕は感じています。
患者さんから信頼してもらえることは、精神科看護の大きなやりがいです。
でも距離が近くなるからこそ、依存されたり、嫌われたり、妄想の対象になったりすることもあります。
看護師だって人間です。
患者さんに対して苦手意識を持ったり、陰性感情を抱いてしまったりすることもあります。
だから精神科では、
「忙しくない=きつくない」ではありません。
急性期とは違った難しさがあります。
それでも僕は、今の精神科を辞めたいとは思っていません。
理由はシンプルです。
今の職場なら、僕が人生で一番大切にしたい「家族との時間」を大切にできるからです。
僕にとって、
仕事は人生のおまけ。
もちろん、仕事を適当にするという意味ではありません。
仕事も大切です。
でも仕事のために家族との時間を犠牲にし続ける働き方を、僕はもう望んでいません。
だからこの記事で一番伝えたいのは、
「精神科は楽だからおすすめ」
という話ではありません。
自分が何を一番大切にしたいのかを知って、それを大切にできる職場を選んでほしい。
ということです。
精神科看護師が「きつい」と感じる7つのこと
僕が実際に精神科で働いて感じた「きつさ」は、大きく分けると次の7つです。
- 患者さんとの距離が近く、人間関係が濃くなりやすい
- 妄想や付きまといの対象になることがある
- 躁状態・不穏など精神症状への対応が難しい
- 暴言や興奮状態の患者さんへの対応に怖さを感じることがある
- 隔離・身体拘束など精神科特有の環境に戸惑うことがある
- 採血・点滴・処置などの看護技術を使う機会が減る
- 身体疾患へのアセスメント・急変対応力が落ちる可能性がある
もちろん、これはすべての精神科病院・病棟に当てはまるわけではありません。
精神科といっても、急性期・慢性期・認知症・依存症など、病棟によって患者層も仕事内容も大きく異なります。
ここからは、僕が勤務している慢性期精神科病棟での経験を中心に、一つずつ紹介します。
1.患者さんとの距離が近く、人間関係が濃くなりやすい
精神科へ来て僕が感じた一般病棟との大きな違いの一つが、
患者さんとの関係の濃さです。
慢性期の精神科には、長期間入院している患者さんもいます。
退院できる状態になっても、退院先がなかなか見つからない方もいます。
当然、同じ患者さんと関わる期間も長くなります。
毎日顔を合わせ、会話をして、その人の性格や考え方、病気の特徴まで少しずつ分かってきます。
これは精神科看護の面白さでもあります。
患者さんとの信頼関係ができてくると、
「あの看護師さんなら話せる」
「トラパパが言うなら薬を飲むよ」
そんなふうに、自分との関係性が治療につながっていると感じる瞬間もあります。
一方で、関係が濃くなることは良いことばかりではありません。
好かれることもあれば、嫌われることもあります。
頼られることもあれば、依存されることもあります。
そして、ときには僕たち看護師側が患者さんに対して、
「この人の対応は苦手だな……」
と感じてしまうことだってあります。

「僕も最初は暴言や嫌味にムカッとしてしまうことがありました。今振り返れば、まだ病気への理解が足りなかったんだと思います。」
でも精神疾患について学び、患者さんと関わる経験を重ねるにつれて、少しずつ考え方が変わりました。
「この人が僕を困らせようとしている」のではなく、「病気の症状がそうさせているのかもしれない」
と考えられるようになったからです。
そう考えられるようになると、患者さんの言葉を必要以上に真正面から受け止めなくなりました。
もちろん、何を言われても我慢すればいいという意味ではありません。
危険な状況では距離を取り、必要なら他のスタッフに助けを求める。
対応が難しい患者さんについては、スタッフ同士で情報を共有する。
精神科では、一人で患者さんとの関係を抱え込まないことがとても大切だと僕は感じています。
人と人との関係だからこそ、相性だってあります。
患者さんにも感情があります。
看護師にも感情があります。
だから僕は、患者さんに苦手意識を持ってしまったからといって、それだけで「精神科看護師失格」だとは思いません。
大切なのは、自分の感情に気づいたうえで、
「どうすれば患者さんと安全に、適切な距離で関われるのか」
をチームで考えることだと思っています。

「看護師だって人間です。苦手だと感じること自体を責めるより、“どう関われば安全か”をチームで考えることのほうが大切だと思っています。」
2.妄想や付きまといの対象になることがある

精神科で患者さんと長く関わっていると、ときには看護師自身が妄想の対象になることがあります。
これは僕自身も経験しました。
ある患者さんへの指導をきっかけに、関係がうまくいかなくなってしまったことがありました。
それまで普通に関わっていた患者さんから無視されるようになり、やがて僕自身が妄想の対象になってしまったのです。
あるとき、その患者さんから、
「トラパパに『出ていけ』って言われた」
という訴えがありました。
もちろん、僕はそんなことを言っていません。
患者さんには幻聴があり、その中で僕から「出ていけ」と言われたと感じていたようでした。
周りのスタッフも患者さんの病状を理解しているため、僕が本当にそのような発言をしたと受け取る人はいませんでした。
それでも、
自分が妄想や幻聴の対象になるというのは、決して気持ちのいいものではありません。
頭では、
「これは病気の症状なんだ」
と理解していても、
毎日顔を合わせる患者さんから無視されたり、自分が言ってもいないことを「言われた」と訴えられたりすると、やはり働きにくさを感じます。
精神科で働く難しさの一つだと思います。

「周りのスタッフは病状を理解してくれていました。それでも、自分が妄想の対象になると最初は戸惑います。」
誤解を解こうとするより、距離を取ることが必要な場合もある
こんなとき、
「僕はそんなこと言ってないよ」
「誤解だから分かってもらわないと」
と、一生懸命説明したくなるかもしれません。
僕も最初は、
「なんとか関係を元に戻したほうがいいのかな」
と思いました。
でも精神科では、必ずしもその場で誤解を解こうとすることが正解とは限りません。
病状によっては、こちらが説明すればするほど患者さんの中で話が大きくなってしまったり、さらに意識を向けさせてしまったりする可能性もあります。
僕の場合は、無理に関係を修復しようとはせず、少し距離を取りながら過ごしました。
必要な看護は行う。
でも、必要以上に近づこうとしない。
そうしているうちに時間が経ち、患者さんとの関係も自然と変わっていきました。
この経験から僕は、
精神科では「関わること」だけでなく、「あえて距離を取ること」も看護の一つなのだと学びました。
もちろん、これはすべての患者さんに当てはまる対応ではありません。
病状やその人との関係性によって、適切な対応は変わります。
だからこそ、一人で判断するのではなく、他のスタッフと情報を共有しながら対応することが大切です。

「何でもその場で解決しようとしなくていい。少し距離を取ることで、時間が解決してくれることもありました。」
患者さんから好意を持たれ、付きまとわれたこともある
逆に、患者さんから好意を持たれることで距離感に悩んだ経験もあります。
僕と同世代の患者さんから好意を持たれ、手紙を渡されたり、僕の後をついてくるような行動が見られたりしたことがありました。
正直、対応には困りました。
患者さんと看護師として適切な距離を取らなければいけない。
でも、
「冷たく突き放してしまうのもどうなんだろう……」
という気持ちもありました。
そこで僕は、自分一人で解決しようとせず、周りのスタッフに相談しました。
すると、他のスタッフが僕と患者さんの距離を取れるように調整してくれました。
また、患者さんに対しても、手紙を渡したり後をついていったりする行動について話をしてくれたようです。
しばらくすると、そのような行動はなくなりました。
その後は再び、
「患者さんと看護師」
という通常の関係で接することができるようになりました。
このとき改めて感じたのが、
患者さんとの関係で困ったときこそ、一人で抱え込まないことの大切さです。

「自分だけで何とかしようとしていたら、もっと対応に困っていたと思います。周りに相談したことで、適切な距離に戻ることができました。」
状況によっては病院側が環境を調整することもある
僕自身の話ではありませんが、以前、女性スタッフが患者さんから強い妄想の対象になってしまったケースもありました。
その患者さんは、スタッフのことを自分の家族だと認識するような妄想を持ち、付きまといが強くなっていきました。
スタッフ側だけで距離を調整しても、なかなか状況が改善しませんでした。
最終的には安全面なども考慮され、患者さんが別の病棟へ移り、そのスタッフと顔を合わせないよう環境を調整することになりました。
精神科への転職を考えている人の中には、
「もし患者さんに付きまとわれたらどうしよう」
「自分が妄想の対象になったら怖い」
と心配する人もいると思います。
実際、その可能性がまったくないとは言えません。
ただし、ここで知っておいてほしいのは、
看護師一人で解決しなければならないわけではない
ということです。
僕の勤務経験では、患者さんとの関係性に問題が生じた場合はスタッフ同士で共有し、必要に応じて距離を取れるように調整します。
そして、スタッフの安全に関わると判断される状況では、病院として対応することもあります。
精神科看護では患者さんの安全はもちろん大切です。
同時に、働くスタッフの安全を守ることも大切です。
「好かれること」も「嫌われること」も精神科では起こり得る
精神科で働き始めた頃の僕は、
「患者さんとは良い関係を作らなければいけない」
という気持ちが強かったように思います。
もちろん、信頼関係はとても大切です。
でも長く働いていると、
すべての患者さんから好かれる必要はない
とも思うようになりました。
人間同士なので相性があります。
あるスタッフの話なら素直に聞ける患者さんが、別のスタッフの話には反発することもあります。
逆もあります。
そして病状によって、その関係性が大きく変化することもあります。
「患者さんに好かれる看護師になること」ではなく、「その患者さんにとって必要な看護を、安全に提供すること」が大切です。
僕はそう考えています。
もし関係が近くなりすぎたら、少し離れる。
自分では対応が難しいと思ったら、他のスタッフに相談する。
患者さんとの相性が悪ければ、チームで補い合う。
それができるのも、病棟看護が一人ではなくチームで行う仕事だからだと思います。

「患者さんとの関係で悩んでも、一人で何とかしようとしなくて大丈夫。精神科だからこそ、チームで関係性を支えることが大切だと思っています。」
3.躁状態・不穏など精神症状への対応が難しい
精神科では、患者さんの病状によって関わり方を大きく変えなければならない場面があります。

「同じ説明でも、患者さんの病状やタイミングによって受け取り方が変わります。精神科では“どう伝えるか”を考えることが本当に多いです。」
僕が精神科で働いていて、特に対応が難しいと感じることがあるのが、躁状態の患者さんです。
もちろん症状の現れ方には個人差がありますが、僕が経験してきた中では、
- 要求が多くなる
- 怒りやすくなる
- 夜になっても眠らない
- 薬を拒否する
- 些細な言葉の違いを指摘してくる
- スタッフによって態度や要求を変える
といった状態になる患者さんもいました。
普段なら気にならないような一言でも、病状によっては患者さんを刺激してしまうことがあります。
そのため、
「この言い方で大丈夫かな」
「他のスタッフはどう説明しているかな」
と、普段以上に言葉を選びながら対応することもあります。
急性期で働いていた頃は、
「限られた時間の中で、いかに安全に処置や治療を進めるか」
を考える場面が多くありました。
精神科ではそれとは少し違い、
「この患者さんに、今どう関われば受け入れてもらえるのか」
を考える場面が多いと感じています。
これも精神科ならではの「きつさ」の一つです。
拒薬への対応が難しいこともある
躁状態などで病状が不安定になると、内服を拒否する患者さんもいます。
こちらとしては、
「薬を飲んで少しでも症状を落ち着かせてほしい」
と思います。
しかし、看護師がそう思っているからといって、簡単に飲んでもらえるとは限りません。
説明しても納得してもらえない。
説得しようとすると、かえって反発される。
頓服を勧めても拒否される。
夜になっても眠れない。
そんなこともあります。
さらに難しいのが、スタッフによって患者さんの反応が違うことがある点です。
僕が説明しても拒否されるのに、別のスタッフが話すと受け入れてくれる。
逆に、僕なら話を聞いてくれるけれど、別のスタッフでは難しい。
そんなことも珍しくありません。
最初の頃は、
「同じ説明をしているのに、なんで?」
と思うこともありました。
でも長く精神科で働いていると、これも人と人との関係なのだと感じます。
だから僕は、
「自分が何とかしなければ」
とは考えないようにしています。
自分では難しいなら、患者さんが信頼しているスタッフにお願いする。
それも立派な対応だと思っています。

「誰が対応しても同じ結果になるとは限りません。“自分が説得しないと”と意地にならないことも大切だと思っています。」
スタッフごとに対応が違うと、患者さんも混乱する
もう一つ大切なのが、スタッフ間で対応を統一することです。
たとえば、ある要求に対して、
Aさんは「いいですよ」
Bさんは「ダメです」
Cさんは「先生に聞いてください」
と対応がバラバラだったら、患者さんも混乱します。
病状によっては、自分の希望を通してくれそうなスタッフを探して、何人ものスタッフに同じ要求を繰り返すこともあります。
すると、
「○○さんはいいって言った」
「昨日はやってくれた」
といった話になり、スタッフ同士でも対応に困ってしまいます。
だからこそ、病棟で情報を共有し、
「この患者さんには、こう対応しよう」
と方針をそろえることが大切です。
必要であれば医師にも相談し、薬の調整を含めて対応を考えます。
精神科看護は、一人の看護師のコミュニケーション能力だけで成り立つ仕事ではありません。
看護師・医師を含めたチーム全体で患者さんを支える仕事だと僕は感じています。
普段の信頼関係が「いざというとき」に生きる
精神科で働いていて、僕が特に面白いと感じるのがここです。
普段から患者さんとしっかり関わっていると、その積み重ねが病状の悪いときに生きることがあります。
たとえば、病状が不安定になり、なかなか薬を飲んでくれない患者さん。
いろいろなスタッフが説明しても拒否していたのに、普段から信頼しているスタッフが、
「今は飲んでおいたほうがいいと思うよ」
と話すと、
「あなたが言うなら飲むよ」
と受け入れてくれることがあります。
僕はこういう場面を見るたびに、
精神科看護は、日々の何気ない関わりそのものが看護なんだ
と感じます。
急変した瞬間だけ頑張ればいいわけではありません。
拒薬したときだけ説得すればいいわけでもありません。
普段から挨拶をする。
話を聞く。
約束を守る。
患者さんの特徴を知る。
その小さな積み重ねが、
「この人の話なら聞いてみよう」
という信頼につながっていきます。
これは、検査や数値だけでは見えにくい精神科看護の面白さだと思っています。

「何気ない会話も無駄じゃないんです。普段の関わりが、“あなたが言うなら”につながる瞬間があります。」
妄想や幻覚がある=対応がつらい、とは限らない
精神科への転職経験がない人の中には、
「妄想がある患者さんとどう話せばいいの?」
「幻覚がある患者さんの対応なんて、自分にできるのかな……」
と不安に思っている人もいるかもしれません。
僕も精神科に来る前は、患者さんがどんな状態なのか、日々どんな看護をするのか、ほとんどイメージできていませんでした。
でも実際に働いてみると、僕の場合は妄想や幻覚の訴えそのものを「きつい」と感じることはあまりありません。
たとえば統合失調症では、幻覚や妄想などの症状がみられることがあります。
精神科では、症状をただ否定したり消そうとしたりするだけではなく、患者さん自身が症状とうまく付き合いながら生活していけるよう支援することも大切です。
僕自身も患者さんと関わりながら、
「今は症状が強くなっていないかな」
「いつもと何か違わないかな」
と、その人なりの変化を見るようになりました。
精神科に来たばかりの頃は分からなかったことも、患者さんと毎日接しているうちに少しずつ見えるようになります。
だから、
「精神科経験がないから、自分には患者さんの対応なんてできない」
と最初から思う必要はないと僕は思っています。
ただし、精神科特有の疾患・薬・法律・コミュニケーションについて、新しく学ぶ必要はあります。
僕自身、一般病院から精神科へ来て、
「同じ看護師でも、こんなに覚えることが違うんだ」
と感じました。
楽そうだから覚えることも少ない。
そんな世界ではありません。

「僕も精神科へ来たときは、ほぼ1からでした。一般病院とは使う薬も考え方も違って、“また勉強だな”と思いましたよ。」
暴言を「病気の症状」と理解できるまでには時間がかかった
病状が不安定な患者さんから、暴言や嫌味を言われたり、怒鳴られたりすることもあります。
僕もあります。
そして正直に言えば、精神科で働き始めた頃は、
普通にムカつくこともありました。
看護師だから何を言われても平気。
そんなことはありません。
僕だって人間なので、嫌なことを言われれば嫌な気持ちになります。
ただ、精神科疾患について勉強し、患者さんと関わる経験が増えてくると、少しずつ受け止め方が変わっていきました。
「この人は本当に僕を嫌って言っているのか?」
「今は病状がそうさせているんじゃないか?」
と、一歩引いて考えられるようになったのです。
すると、以前なら腹を立てていた言葉も、必要以上に引きずらなくなりました。
今振り返ると、当時の僕には病気への理解が足りなかった部分もあったと思っています。
もちろん、病気だから暴言や危険な行動をすべて我慢しなければならないという話ではありません。
安全を脅かす状況なら、一人で対応せず、周囲へ応援を求める必要があります。
それでも、
「患者さん本人」と「病気によって現れている症状」を分けて考える。
この視点を持てるようになったことで、僕は精神科でずいぶん働きやすくなりました。

「最初は僕もムカついていました。でも、“病気がそうさせているのかもしれない”と考えられるようになって、ずいぶん楽になりました。」
4.暴言や興奮状態の患者さんへの対応に怖さを感じることがある

精神科への転職を考えている人が、不安に感じることの一つが、
「患者さんから暴力を受けることはないの?」
ということではないでしょうか。
僕自身、これまで精神科で働いてきて、患者さんから直接暴力を受けた経験はありません。
ただ、暴言や嫌味を言われたり、怒鳴られたりした経験はあります。
そして一度だけ、
「精神科って怖いかもしれない」
と強く感じた出来事があります。
精神科へ転職して、まだそれほど経っていなかった頃のことです。
警察官と一緒に入院してきた若い患者さん
その日、若い男性患者さんが入院してきました。
患者さんは激しく興奮していて、両脇にいた警察官を振りほどこうとするような状態でした。
大きな声を出し、こちらから話しかけても指示が入りません。
僕は精神科に来てから、ここまで激しく興奮した患者さんを目の前で見るのが初めてでした。
正直、
怖かったです。
そして同時に、
「僕は何をすればいいんだ?」
と思いました。
一般病院でさまざまな患者さんを看てきた経験はありました。
急変対応も経験してきました。
それでも、目の前で激しく興奮している患者さんへの対応は、僕にとってまったく別の経験でした。
何をしてくるか予測できない。
こちらの話も入らない。
精神科で働き始めたばかりだった僕には、どう動けばいいのか分かりませんでした。
あのときが、
僕が精神科へ来て初めて「怖い」と感じた瞬間でした。

「一般病院で急変対応は経験していました。でも、激しく興奮した患者さんへの対応は初めて。“何をしたらいいんだ?”という怖さがありました。」
一人で対応するのではなく、複数のスタッフで安全を確保する
そのとき、もちろん僕一人で患者さんに対応したわけではありません。
複数のスタッフで対応しました。
安全を確保しながら必要な処置が行われ、医師の指示のもとで薬剤による鎮静も行われました。
僕がそこで学んだのは、
「危険な状況を、一人で何とかしようとしない」
ということです。
今働いている病院でも、不穏な患者さんへの対応中に怒鳴り声が聞こえたり、状況が悪くなりそうだと感じたりすれば、周囲のスタッフがすぐに駆けつけます。
僕自身も、他のスタッフが不穏な患者さんに対応しているのを見たら、できるだけすぐ近くへ行くようにしています。
「担当じゃないから」
ではありません。
患者さんとスタッフ双方の安全を守るために、必要なときはみんなで対応する。
これがとても大切です。
さらに、通常の病棟スタッフだけでは安全を確保することが難しい状況では、院内の緊急コールを使用し、他部署から応援を集められる体制があります。
こうした安全対策が整っているかどうかは、精神科で安心して働くうえで重要だと僕は思っています。

「他のスタッフが不穏患者さんに対応していたら、僕もすぐ駆けつけます。“誰かがやってくれる”ではなく、お互いに助け合うことが安全につながります。」
症状が落ち着くと、普通に会話できるようになった
この経験で、もう一つ強く印象に残っていることがあります。
入院時には、警察官を振りほどこうとするほど興奮していた患者さん。
僕は最初、
「これからどうなるんだろう」
と不安でした。
しかし、治療によって興奮状態が落ち着いた後は、しっかり会話ができる状態になりました。
そして状態を評価しながら、必要がなくなった行動制限も解除されていきました。
この経験は、精神科に来たばかりだった僕にとって非常に大きなものでした。
最初に見た激しい興奮状態だけが、その患者さんのすべてではなかったからです。
精神症状が強く出ている瞬間だけを見て、
「この人は怖い人なんだ」
と決めつけてはいけない。
病状が落ち着けば、普通に話すことができる。
その経験を通して、
「患者さん本人」と「そのとき現れている症状」を分けて考えることの大切さ
を改めて感じました。

「入院時は本当に怖かった。でも落ち着いた後は、しっかり話ができました。“怖い人”なのではなく、あのときは症状が強く出ていたんだと実感しました。」
「病気だから仕方ない」と危険を我慢する必要はない
ここまで読んで、
「精神疾患の症状なら、暴言を言われても我慢しなきゃいけないの?」
と思った人もいるかもしれません。
僕はそうは思いません。
病気への理解は必要です。
暴言や行動の背景に症状があることを理解できれば、必要以上に腹を立てたり、自分を責めたりせずに済むこともあります。
でも、
病気を理解することと、自分の身を危険にさらすことは別です。
危険を感じたら距離を取る。
一人で対応しない。
周囲へ助けを求める。
必要なら緊急コールを使う。
精神科で長く安全に働くためには、こうした判断も必要だと思っています。
そしてこれは、精神科への転職を考えるときにも確認してほしいポイントです。
求人票に給料や休日数は書かれています。
でも、
「患者さんが不穏になったとき、どんな応援体制になっていますか?」
ということまでは、求人票だけでは分からないことが多いです。
精神科未経験で不安がある人ほど、病院見学や面接などで安全対策や緊急時の応援体制を確認しておくと、入職後の安心につながると思います。

「給料や休日だけじゃなく、“不穏時に一人で対応することはあるのか”“緊急時は誰が応援に来るのか”も確認できると安心ですよ。」
自分では聞きにくいことは、転職エージェントに確認してもらう方法もある
とはいえ、病院見学でいきなり、
「患者さんが暴れたらどうするんですか?」
「危険な患者さんはいますか?」
と細かく質問するのは、少し聞きにくいですよね。
僕自身、初めて精神科へ転職したときは、精神科の仕事内容や患者層について十分にイメージできていませんでした。
当時は転職エージェントから情報をもらうことが多く、自分自身では精神科についてあまり調べていなかったんです。
今振り返ると、
エージェントから情報を集めながら、自分でも精神科について調べておけば、もっと理解したうえで転職できた
と思っています。
転職エージェントは、何も考えずに転職先を決めてもらうために使うのではなく、
自分では聞きにくい情報を集めるために利用する。
僕はそんな使い方がいいと思っています。
たとえば、
「不穏時の応援体制はどうなっていますか?」
「夜勤中に患者さんが興奮した場合、何人で対応できますか?」
「精神科未経験者への教育はありますか?」
といったことを確認してもらうのも一つの方法です。
その情報と、自分自身で調べた内容、そして病院見学で感じた雰囲気。
それらを合わせて判断すれば、「思っていた精神科と違った」という転職後のミスマッチを減らせると思います。

「僕は最初の精神科転職で、ちょっとエージェント任せにしすぎました(笑)。自分でも調べたうえで、聞きにくいところを確認してもらえばよかったと思っています。」
僕が転職6回でたどり着いた「自分に合う病院」の見つけ方はこちら↓
5.隔離・身体拘束など精神科特有の環境に戸惑うことがある

精神科へ転職して、一般病院との違いを強く感じたものの一つが、
「隔離」という環境でした。
身体拘束については、僕は一般病院でも経験していました。
たとえば、患者さんが生命に関わる重要なチューブを抜いてしまう危険がある場合などです。
もちろん一般病院でも、身体拘束は安易に行うものではありません。
一方で、隔離室を実際に見たのは精神科へ転職してからが初めてでした。
初めて隔離室を見たときのことは、今でも覚えています。
室内には物がほとんどなく、閉鎖的な環境。
一般病棟の病室とはまったく違います。
あくまで僕が初めて見たときの個人的な印象ですが、
「刑務所みたいだな……」
と感じました。
そして、
「自分がここに入ることになったら怖いだろうな」
とも思いました。
精神科未経験だった僕にとって、それくらい特殊な環境に見えたのです。

「初めて見たときは正直、“ここに入ったら怖いだろうな”と思いました。一般病床とはまったく違う環境だったんです。」
「閉鎖的な場所に入れたら、もっと不穏になるんじゃないか」と思っていた
精神科へ来たばかりの僕には、もう一つ疑問がありました。
興奮している患者さんを隔離室のような閉鎖的な環境に入れたら、
「余計に不穏になってしまうんじゃないか?」
と思っていたんです。
ところが、実際に精神科で働いてみると、僕の想像とは違う患者さんもいました。
刺激の少ない環境で過ごすことによって、徐々に落ち着いていく人がいたのです。
精神科病棟は、患者さんにとって治療の場であると同時に、生活の場でもあります。
病棟内には複数の患者さんがいて、人の話し声が聞こえたり、誰かが歩いていたり、テレビがついていたりします。
一般病棟とはまた違った意味で、にぎやかに感じることがあります。
精神症状が強くなっている患者さんにとっては、そうした周囲からの刺激が負担になる場合があります。
僕は実際の患者さんを見ながら、
「刺激を減らすこと自体が、その人にとって必要な場合もあるんだ」
と知りました。
精神科へ来る前のイメージと、実際に患者さんを見てからの印象は大きく変わりました。

「僕は“閉鎖的な環境にしたら、もっと不穏になるんじゃないか”と思っていました。実際には、刺激が減ることで落ち着いていく患者さんもいて驚きました。」
「隔離室のほうが落ち着く」という患者さんもいた
さらに僕が驚いたのが、
刺激の少ない環境を好む患者さんもいたことです。
僕からすると、
「できるだけ早く普通の病室に戻りたいと思うんじゃないの?」
という感覚がありました。
でも患者さんによって感じ方は違います。
人の声や周囲の動きなど、さまざまな刺激がある環境よりも、静かな環境のほうが落ち着くと感じる方もいました。
この経験から僕は、
自分にとって快適な環境が、患者さんにとっても快適とは限らない
ということを改めて学びました。
これは精神科看護をしていると、何度も感じることです。
「普通ならこう思うだろう」
「自分ならこうしてほしい」
という自分自身の感覚だけで患者さんを見ると、その人に必要な看護を見失うことがあります。
その人が何に困っているのか。
何が刺激になっているのか。
どういう環境なら落ち着いて過ごせるのか。
患者さん自身を見ながら考えることが、精神科ではとても大切だと思っています。

「“自分だったら嫌だ”だけで判断しちゃいけないんですよね。その患者さんにとって何が必要なのかを見ることが大切だと感じました。」
「精神科はすぐ隔離・拘束する」と思っていた
精神科へ来る前の僕には、
「精神科では、患者さんが暴れたらすぐ隔離したり拘束したりするのかな」
というイメージもありました。
でも、実際に働き始めて、その認識も変わりました。
隔離や身体拘束などの行動制限は、
「対応が大変だから」
という理由だけで安易に行うものではありません。
精神科では、患者さんの状態や安全性などを踏まえて必要性を判断し、行動制限を行った後も、そのままにするのではなく解除に向けて状態を評価していきます。
先ほど紹介した、僕が精神科で初めて「怖い」と感じた若い男性患者さんもそうでした。
入院時は激しく興奮していて、安全確保のために行動制限が必要な状態でした。
しかし治療によって落ち着き、会話ができるようになれば、状態を確認しながら行動制限も解除されていきました。
僕はその過程を見て、
「隔離や拘束をすること」が目的なのではなく、「安全を守りながら、必要がなくなれば解除していくこと」が大切なのだ
と理解するようになりました。

「精神科へ来る前は、僕も“すぐ隔離や拘束をするのかな”というイメージがありました。実際に働いてみて、その認識は変わりました。」
精神科では「なぜこの対応が必要なのか」を学ぶ必要がある
一般病院から精神科へ転職すると、
「なんでこの患者さんは隔離されているんだろう?」
「なぜ今は病棟に出られないんだろう?」
と戸惑う場面があるかもしれません。
僕もそうでした。
でも精神科では、精神疾患についてだけでなく、患者さんの権利や行動制限に関わる制度・ルールについて学ぶことも必要です。
精神科は、
「検査が少ない」
「点滴が少ない」
「残業が少ない」
という部分だけを見ると、一般病棟より覚えることが少ないように見えるかもしれません。
でも実際には、
精神科には精神科で、新しく覚えなければならないことがたくさんあります。
精神疾患。
向精神薬。
患者さんとのコミュニケーション。
精神科特有のアセスメント。
電気けいれん療法。
クロザピンなど、特別な管理が必要になる治療や薬剤。
そして、精神科医療に関係する法律や制度。
僕自身、精神科へ転職して、
「看護師としてまた1から勉強することがこんなにあるんだ」
と感じました。
だから、
「精神科なら楽そうだから転職しよう」
という理由だけで選ぶと、
「思っていた仕事と違った」
となる可能性があります。

「検査や点滴は減りました。でも、“勉強することまで減ったか?”と言われたら全然そんなことはありませんでした(笑)。」
精神科未経験だからこそ「教育体制」も確認してほしい
だから僕は、精神科未経験で転職する人には、給与や休日だけでなく教育体制も確認してほしいと思っています。
たとえば、
「精神科未経験者には、どのように指導していますか?」
「プリセプターや教育担当者はいますか?」
「入職してから、どんな流れで仕事を覚えていきますか?」
「夜勤はどのくらいの時期から始まりますか?」
こうした情報が事前に分かっているだけでも、入職後の不安はかなり違うと思います。
精神科病院によって、教育体制には差があります。
だからこそ、
「精神科だから働きやすそう」ではなく、「その病院で自分が安心して仕事を覚えられるか」まで見ることが大切です。
自分から細かく質問するのが難しければ、転職エージェントに教育体制を確認してもらう方法もあります。
精神科未経験者なら、
「未経験で入職した看護師が、実際にどのように独り立ちしているのか」
まで聞けると、より具体的に働く姿をイメージしやすくなると思います。

「精神科未経験なら、“未経験者はどうやって仕事を覚えるのか”を聞いておくと安心です。聞きにくければエージェントに確認してもらってもいいと思います。」
6.採血・点滴・処置などの看護技術を使う機会が減る
精神科への転職を考えている看護師さんの中には、
「精神科に行ったら看護技術が落ちるんじゃない?」
「点滴や採血ができなくなりそうで不安……」
と心配している人もいると思います。
これは僕自身、実際に精神科で働いて感じていることがあります。
結論から言うと、
僕が現在働いている慢性期精神科病棟では、一般病棟と比べて採血・点滴・医療処置を行う機会はかなり減りました。
ただし、ここは注意してほしいところです。
すべての精神科病院・精神科病棟で同じではありません。
身体合併症のある患者さんを多く受け入れている病棟もありますし、点滴や経管栄養などを日常的に行っている精神科病棟もあります。
ここからお話しするのは、あくまで僕が現在働いている慢性期精神科病棟での経験です。

「“精神科=点滴をしない”と一括りにはできません。病院や病棟によって、身体管理をどこまで行うかはかなり違うと思います。」
今の病棟では、点滴をする患者さんはかなり少ない
現在僕が働いている病棟には、身体面が比較的落ち着いている患者さんが多くいます。
経管栄養を行っている患者さんはいません。
点滴をする患者さんも稀です。
採血については、定期採血などで行う機会があります。
また、クロザピンによる治療を受けている患者さんでは、必要な検査・採血に関わることもあります。
それでも一般病棟で働いていた頃と比べると、
針を持つ機会そのものがかなり減った
というのが僕の実感です。
一般病棟時代には当たり前のように行っていた処置を、今では長期間やらないこともあります。
最初は、
「こんなに医療処置がないんだ」
と驚きました。
でも、これは悪いことばかりではないとも思っています。
身体面が比較的安定しているからこそ、精神症状への看護や患者さんとの関わりに時間を使える。
精神科の治療に専念できる環境だからこその特徴でもあると感じています。

「一般病棟では処置に追われることもありました。精神科では患者さんと話したり、関係を作ったりすること自体が大切な仕事になります。」
「看護技術が落ちる可能性」は正直あると思う
では、
「精神科に転職すると看護技術は落ちるのか?」
僕自身の答えは、
使う機会が減る技術については、以前より鈍る可能性はある
です。
これは精神科に限った話ではないと思います。
どんな技術でも、長期間使わなければ感覚が鈍ることはあります。
毎日のように点滴をしている看護師と、数か月ほとんど点滴をしていない看護師では、経験する回数が違います。
僕自身も、
「前だったらもっと自然にできていたな」
と思うことがあります。
だから、
「精神科に転職しても、看護技術はまったく落ちません」
とは僕は言えません。
一方で、
「精神科へ行ったら看護師として何もできなくなる」
というのも違うと思っています。
使う技術が変わるからです。
一般病棟で求められる技術と、精神科で求められる技術は同じではありません。
精神科では、
患者さんの表情や言動の変化を見る。
精神症状の変化を捉える。
適切な距離感を考える。
拒薬の背景を考える。
患者さんとの信頼関係を作る。
スタッフ間で対応を統一する。
こうした力が求められます。
「技術がなくなる」のではなく、「日常的に使う看護の技術が変わる」。
僕はそんな感覚に近いです。

「点滴や処置は減りました。でもその代わり、患者さんの言動や表情から精神状態を考える力は、精神科に来てかなり鍛えられたと思います。」
僕がむしろ気になるのは「身体アセスメント能力」
僕が看護技術以上に気をつけているのが、
身体疾患をアセスメントする力です。
精神科で働いていても、患者さんが身体疾患を発症しないわけではありません。
慢性期精神科には高齢の患者さんもいます。
既往歴を複数持っている人もいます。
そして当然、
「胸が苦しい」
「お腹が痛い」
「今日はなんだか調子が悪い」
と身体症状を訴えることもあります。
そのとき、
「精神科の患者さんだから精神的なものだろう」
と決めつけることはできません。
本当に身体疾患が隠れている可能性があります。
逆に、精神症状などが身体的な訴えに影響している場合もあります。
だから精神科看護師にも、
「これは身体的な問題なのか?精神面から来ているのか?」
と考える力が必要です。
僕自身、一般病棟で働いていた頃と比べると、身体疾患に触れる機会が減りました。
以前なら症状を聞いた瞬間に、
「あれとこれが関連しているかもしれない」
とパッと考えられていたものが、
以前より関連づけるまでに時間がかかるようになった
と感じることがあります。
これについては、僕自身も危機感を持っています。

「精神科でも身体疾患はあります。“精神科の患者さんだから”と決めつけないことは、本当に大切だと思っています。」
身体管理の力を落とさないために、僕が意識していること
だから僕は、身体管理について完全に精神科任せの頭にならないよう意識しています。
患者さんに身体症状があれば、
「何が考えられるだろう?」
「この症状とこの既往歴は関係していないか?」
「どんな変化があれば危険なんだろう?」
と、自分なりにいくつかの可能性を考えるようにしています。
分からないことがあれば、本を読んで確認することもあります。
精神科で働いているから身体疾患を勉強しなくていい。
僕はそうは思いません。
むしろ、
日常的に身体疾患へ触れる機会が少ないからこそ、
自分から忘れないようにする意識が必要だと感じています。
もちろん、すべてを一人で判断する必要はありません。
患者さんの状態に変化があれば医師へ報告し、必要な診察や検査、治療につなげます。
大切なのは、
「いつもと違う」に気づき、それを適切につなげること。
これは精神科でも一般病棟でも変わらない看護師の役割だと思っています。
新卒ですぐ精神科へ行くのはダメなの?
「精神科に興味があるけど、新卒から精神科に行ってもいいの?」
という人もいると思います。
これは難しいところです。
僕は、
「新卒で精神科へ行ったらダメ」
とは思いません。
精神科看護に強い興味があって、そこで専門性を高めたい人もいるでしょう。
教育体制が整った病院なら、新卒から精神科看護を学んでいく選択肢もあると思います。
ただ、僕自身の経験から言えば、
最初に一般病院で身体管理や急変対応を経験しておいて、本当によかった
と思っています。
僕は急性期で、さまざまな疾患・治療・検査・処置・急変対応を経験してきました。
精神科へ転職してからも、その経験が役に立つ場面があります。
身体症状を訴える患者さんを見たとき。
急に状態が悪くなったとき。
医師へ何を報告すればいいか考えるとき。
過去に経験したものが、自分の中の引き出しとして残っています。
だから、もし後輩から、
「精神科に興味があるんですけど、最初から精神科でいいですか?」
と相談されたら、
僕なら一般病院で身体管理や急変対応を経験してから精神科へ行く道も勧めます。
ただし、これは僕自身のキャリアを振り返っての考えです。
精神科を目指すすべての新人看護師に当てはまる絶対的な正解ではありません。
大切なのは、
自分が将来どんな看護師になりたいのかまで考えて、最初の職場を選ぶこと
だと思っています。

「急性期で身につけたものは、精神科に来てもなくなりませんでした。むしろ“経験しておいてよかった”と思う場面があります。」
精神科から一般病院へ戻れなくなるわけではない
もう一つ、
「一度精神科へ転職したら、一般病院には戻れないんじゃない?」
と不安に思う人もいるかもしれません。
僕の周りには、精神科から一般病院へ戻った看護師もいます。
僕自身も、今の病院を辞めるつもりはありませんが、
「もう一般病院では働けない」
とは思っていません。
ただし、精神科での勤務が長く、一般病院での経験がほとんどない状態から一般病院へ転職する場合は、最初は大変だと思います。
見たことのない処置。
使ったことのない医療機器。
知らない薬。
一般病院独自の仕事の流れ。
看護師としての経験年数はあるのに、
「知らない」
「できない」
という場面が続けば、自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。
だからこそ転職では、
「今が楽かどうか」だけでなく、「これからどんなキャリアを歩みたいか」も考えることが大切です。
精神科で専門性を深めたいのか。
いずれ一般病院へ戻りたいのか。
プライベートを優先したいのか。
最新医療に触れ続けたいのか。
どれが正しいという話ではありません。
自分が何を大切にしたいかによって、選ぶ職場は変わります。

「精神科に行くか一般病院に残るかより、“自分はこれから何を大切にしたいのか”を考えるほうが大事だと思っています。」
7.身体疾患へのアセスメント・急変対応に不安を感じることがある

精神科でも、患者さんの急変がまったくないわけではありません。
ただ、僕が現在働いている慢性期精神科病棟では、一般病棟と比べると急変はかなり少ないです。
僕の勤務経験では、急変対応が必要になるのは年に1〜2回程度。
もちろん、これはあくまで僕の勤務する病棟での話で、病院・病棟・患者層によって大きく異なります。
急変が少ないことは、落ち着いて働けるという意味ではメリットです。
一方で、
「急変対応を経験する機会が少ない」という別の問題もあります。
実際、精神科で働いているスタッフの中には、
「急変対応は不安」
「身体管理には自信がない」
と話す人もいます。
そして僕自身も、精神科で働く期間が長くなるにつれて、
身体疾患へのアセスメント能力を維持することの大切さ
を感じるようになりました。

「普段が落ち着いているからこそ、いざ急変が起きたときに“ちゃんと動けるかな”という不安を感じるスタッフもいます。」
精神科病棟で起きた「窒息」の急変
僕自身、精神科病棟で患者さんの窒息による急変に遭遇したことがあります。
普段は身体面が比較的落ち着いている患者さんが多い病棟です。
そんな環境で突然、緊急対応が必要になりました。
緊急コールをかけ、院内から医師や看護師が集まってきます。
そして僕も急変対応に入りました。
ルート確保。
心肺蘇生。
挿管の介助。
一般病棟時代には経験していたことですが、精神科へ来てからはほとんど行っていませんでした。
久しぶりの急変対応です。
それでも、そのときの僕は、
意外なほど迷わず動くことができました。

「ルート確保、心肺蘇生、挿管介助……。久しぶりでしたが、不思議と身体が動きました。」
急性期で身につけた経験は、ちゃんと残っていた
急変対応が終わったあと、僕が感じたのは、
「大切なことって、意外と忘れないものなんだな」
ということでした。
もちろん、細かな知識や普段使わない技術は忘れていきます。
身体疾患のアセスメントも、一般病棟にいた頃より以前のように素早く関連づけられなくなったと感じることがあります。
それでも、急変時に何を優先すべきなのか。
どう動けばいいのか。
次に何が必要になるのか。
急性期で何度も経験してきたことが、自分の中に残っていました。
僕はこのとき改めて、
一般病院で積んできた経験は、精神科へ転職しても無駄にはならない
と実感しました。
むしろ精神科だからこそ、身体管理の経験が役に立つ場面があります。
急性期で経験した急変対応が、精神科での窒息対応でも大きな助けになりました。

「精神科に来て使わなくなった技術もあります。でも、本当に必要な場面になったら、急性期で積み重ねた経験がちゃんと助けてくれました。」
精神科経験しかないスタッフが、急変時に戸惑うこともある
一方で、その急変対応では別のことも感じました。
精神科での経験が中心のスタッフの中には、
急変時に不安や戸惑いが強く出る人もいました。
何をすればいいのか分からず、少し後ろに下がってしまう。
直接的な処置にはなかなか入れない。
実際に、
「急変対応は不安」
と話しているスタッフもいます。
これは、そのスタッフが看護師として劣っているという意味ではありません。
単純に、
「できない」のではなく、「経験する機会が違う」
のだと僕は思っています。
精神科経験の長い看護師なら、精神症状の変化や患者さんとの距離感、不穏時の対応など、僕より優れた力を持っていることがあります。
反対に、一般病院で長く働いてきた看護師は、身体疾患の急変時に経験を発揮しやすい。
それぞれ得意分野が違います。
だからこそ病棟では、
お互いの経験を生かしながらチームで補い合うことが大切
だと思っています。

「精神科しか経験していないからダメ、急性期経験があるから偉い、という話ではありません。それぞれ得意なことが違うんです。」
身体症状を「精神的なもの」と決めつけない力も必要
急変だけではありません。
精神科では、日常的な身体症状をどう捉えるかも重要です。
患者さんが、
「苦しい」
「痛い」
「気持ち悪い」
と訴えたとき、
精神科だからといって、
「精神的なものじゃない?」
と簡単に判断することはできません。
本当に身体疾患が隠れている可能性があります。
特に高齢の患者さんや、複数の既往歴を持つ患者さんでは、身体面の観察も欠かせません。
僕が一般病院経験の長いスタッフを見ていて感じるのは、
「何を見るべきなのか」「何を医師へ伝えるべきなのか」を整理するのが早い
ということです。
どの症状を中心に見るのか。
どんな情報を集めるのか。
何を優先して報告するのか。
こうした力は、身体疾患をたくさん経験する中で身についていくものだと思います。
精神科看護では精神面を見る力が必要です。
でも、
精神科だから身体を見なくていいわけではありません。
僕はむしろ、両方を見ることのできる看護師でいたいと思っています。
病院によって「どこまで身体治療を行えるか」が違う
精神科への転職を考えるなら、もう一つ知っておいてほしいことがあります。
それは、
精神科病院によって、院内で対応できる身体治療の範囲が違う
ということです。
一般病院では当たり前に使っていた医療機器や設備が、精神科病院にはない場合があります。
たとえば僕の経験では、病院によっては人工呼吸器や輸液ポンプなどを常備していないところもあります。
その病院では対応できない治療が必要になれば、身体治療が可能な医療機関への転院を検討することになります。
だからこそ、患者さんが身体的に悪化した場合に、
「この病院ではどこまで対応するのか」
「それ以上の治療が必要になったらどうするのか」
という方針を理解しておくことが大切です。
患者さん本人や家族の治療に対する希望を事前に確認しておくことも重要になります。
一般病院から精神科へ転職すると、このあたりの違いに戸惑う人もいると思います。
僕自身も、
「一般病院では当たり前だったことが、精神科では当たり前ではないんだ」
と感じることがありました。

「一般病院と同じ設備が全部そろっているとは限りません。“身体状態が悪化したらどうする病院なのか”も知っておくといいと思います。」
転職前に「急変時の対応」まで確認しておくと安心
だから精神科への転職では、給与・休日・残業時間だけでなく、
急変時の体制についても確認しておくことをおすすめします。
たとえば、
「急変時はどのような応援体制ですか?」
「夜勤中に急変した場合、誰に応援を求められますか?」
「院内でどこまで身体治療に対応できますか?」
「対応できない場合は、どのように他院へつなげていますか?」
「精神科未経験者への急変対応の教育はありますか?」
こうしたことです。
特に精神科未経験なら、
「いざというとき、一人にされない環境か」
は確認しておいて損はないと思います。
とはいえ、ここまで病院見学で自分から細かく聞くのは難しい人もいるでしょう。
そんなときは、転職エージェントを使って事前に確認してもらう方法もあります。
僕は転職エージェントに全部お任せする必要はないと思っています。
でも、
自分では聞きにくいことを確認してもらうために使う
のは、とても便利な使い方だと思います。

「聞きにくいことほど、入職してから大事だったりします。自分で聞きづらければ、エージェントに確認してもらえばいいんです。」
ここまでのまとめ|精神科の「きつさ」は急性期とは種類が違う
ここまで、僕が精神科で働いて感じてきた7つの「きつさ」を紹介しました。
改めてまとめると、
- 患者さんとの距離が近く、人間関係が濃くなりやすい
- 妄想や付きまといの対象になることがある
- 躁状態・不穏など精神症状への対応が難しい
- 暴言や興奮状態の患者さんへの対応に怖さを感じることがある
- 隔離・身体拘束など精神科特有の環境に戸惑うことがある
- 採血・点滴・処置などの看護技術を使う機会が減る
- 身体疾患へのアセスメント・急変対応に不安を感じることがある
こうして並べると、
「やっぱり精神科って大変そう……」
と思う人もいるかもしれません。
でも僕は、精神科だけが特別きついとは思っていません。
急性期には急性期のきつさがあります。
回復期には回復期の難しさがあります。
精神科にも精神科ならではの大変さがあります。
どんな職場にも、きついことはあります。
僕が大切だと思うのは、
「きついことがあるか?」ではなく、「そのきつさを受け入れてでも、自分がそこで働く理由があるか?」
ということです。

「100%嫌なことがない職場を探すより、“それでもここで働きたい”と思える理由がある職場を探すほうが大切だと思っています。」
そして僕には、精神科で働き続ける理由があります。
次は、
「それでも僕が精神科を辞めない理由」
についてお話しします。
それでも僕が精神科を辞めない理由

ここまで精神科看護師として働く「きつさ」を正直に書いてきました。
患者さんとの距離感に悩むこともある。
妄想の対象になることもある。
不穏や興奮状態の患者さんへの対応に緊張することもある。
採血や点滴などの機会が減り、身体管理の力が落ちないよう意識する必要もある。
それでも僕は今、
「精神科を辞めたい」
とは思っていません。
なぜなら、
今の職場では、僕が人生で一番大切にしたいものを大切にできているからです。
それが、
家族との時間です。

「精神科にきついことがないから続けているわけじゃありません。それ以上に、“ここで働く理由”が僕にはあるんです。」
急性期で忙しく働いていた頃が懐かしくなることもある
僕は精神科へ来る前、一般病院でも長く働いてきました。
急性期では、さまざまな疾患の患者さんを看護しました。
検査や治療、医療処置。
急変対応。
次々と入ってくる新しい知識。
新しい医療機器や設備に触れる機会もありました。
忙しかった。
本当に大変でした。
でも不思議なもので、精神科で働いていると、
あの頃が懐かしくなることがあります。
今の病棟では、急性期のように一日中時間に追われることはほとんどありません。
検査や処置も少なく、病棟の時間は比較的ゆっくり流れています。
だから、ときどき思うんです。
「新しいことをもっと勉強したいな」
「久しぶりにいろいろな医療に触れてみたいな」
「忙しかったけど、あの頃は刺激があったな」
と。
精神科のゆっくりした時間を、退屈に感じる日だってあります。

「急性期にいた頃は“もう少しゆっくり働きたい”と思っていたのに、ゆっくり働けるようになると刺激が欲しくなる。人間ってないものねだりですよね(笑)。」
100%すべてが満たされる職場なんてない
でも僕は、それでいいと思っています。
給料が高い。
残業がない。
人間関係がいい。
休みが多い。
有休が取りやすい。
家から近い。
最新医療を学べる。
教育体制も完璧。
仕事も毎日楽しい。
全部そろっている。
そんな職場があれば最高ですよね。
でも僕は、転職を何度も経験してきて、
100%すべての希望を満たしてくれる職場を探し続けるのは難しい
と思うようになりました。
何かを選べば、何かを諦めなければならないこともあります。
僕の場合は、
最新医療に触れ続けることより、
忙しく働いて成長し続けることより、
家族との時間を優先することを選びました。
だから、たまに仕事が退屈に感じても、
「まぁ、いいか」
と思えます。
自分が何を優先して今の職場を選んでいるのか、分かっているからです。

「完璧じゃなくていいんです。“ここだけは譲れない”というものが満たされているか。それが僕には大切でした。」
精神科へ転職して、家族中心の生活ができるようになった
今の僕は、以前より家族中心の生活ができています。
始業前に早く病院へ行って大量の情報収集をすることも、ほとんどありません。
勤務が終われば、時間通りに帰れる日が多い。
有休も取りやすい。
家庭の事情にも理解があります。
子どものことで急に休まなければならなくなったときも、職場に助けてもらいました。
僕が求めていたのは、
「仕事を頑張れる職場」だけではありませんでした。
「仕事以外の人生も大切にできる職場」だったんです。
若い頃の僕は、
もっと経験したい。
もっとできる看護師になりたい。
もっと給料が欲しい。
そんなことを考えて職場を選んだ時期もありました。
それも間違いではありません。
その経験があるから、今の僕があります。
でも、結婚して、子どもが生まれて、年齢を重ねるにつれて、僕が仕事に求めるものは変わりました。
今の僕にとって一番大切なのは、
家族と過ごす時間です。

「若い頃の僕と、3人の子どもの父親になった今の僕では、仕事に求めるものが違います。それでいいと思っています。」
僕にとって「仕事は人生のおまけ」

このブログでも何度か書いていますが、僕には大切にしている考えがあります。
それは、
「仕事は人生のおまけ」
ということです。
こう書くと、
「仕事を適当にやっているの?」
と思われるかもしれません。
もちろん違います。
働いている以上、患者さんには責任を持って向き合います。
必要な勉強もします。
看護師として成長することも大切です。
でも僕は、
仕事をするために人生があるのではなく、
大切な人生を守るために僕は働いています。
家族とご飯を食べる。
子どもの成長を見る。
休日に一緒に出かける。
妻と話をする。
子どもの行事に参加する。
そんな何気ない時間を守るために、僕は働いています。
仕事で評価されることも嬉しい。
給料が上がることも嬉しい。
新しい技術を身につけることも嬉しい。
でも、それらと家族との時間のどちらか一つを選ばなければならないなら、
僕は家族を選びます。
それが、今の僕の答えです。

「仕事も大切。でも僕にとって一番大切なのは家族です。そこだけは、もう迷わなくなりました。」
「精神科だから続けられる」ではなく「今の職場だから続けられる」
ここでもう一つ、伝えておきたいことがあります。
僕が今の働き方に満足しているからといって、
「精神科へ転職すれば、みんな同じ働き方ができる」
というわけではありません。
精神科病院にも、
忙しい病院。
残業のある病院。
人間関係に悩む病院。
給与の低い病院。
教育体制が十分ではない病院。
いろいろな職場があります。
僕自身、精神科病院は今の職場が初めてではありません。
だからこそ強く感じます。
大切なのは、
「精神科を選ぶこと」だけではなく、「自分に合う病院を選ぶこと」です。
僕が今の生活を手に入れられたのは、
「精神科だから」
だけではありません。
自分が大切にしたいものと、今の職場の環境が合っていた。
それが大きかったと思っています。

「“精神科ならどこでもいい”ではないんです。同じ精神科でも、病院によって働きやすさは全然違います。」
転職6回した僕が考える「自分に合う病院」の見つけ方の記事はこちら↓
「精神科がきつい」のではなく、その職場が合っていない可能性もある
僕がこれまで精神科で働いてきて、
「精神科そのものが合わないから辞める」
という人は、意外と多く見ていません。
むしろ僕の周りでは、
病院の体制や人間関係などを理由に辞める人のほうが多い印象があります。
もちろん、これは僕の勤務経験の範囲での話です。
忙しく働くことが好きな人なら、精神科のゆっくりした時間が退屈に感じるかもしれません。
最新の医療や設備に触れ続けたい人にも、物足りなく感じる可能性があります。
一方で、
一般病院では自分らしく働けなかった人が、精神科へ来て生き生きすることもあります。
僕には、今でも印象に残っている看護師がいます。
以前、一般病院で一緒に働いていた女性看護師です。
当時の彼女は、どちらかというとあまり話さず、少し暗い印象がありました。
ところが、後に精神科で再会すると、まるで印象が違いました。
明るく、生き生きと働いていたんです。
彼女は僕に、
「自分が自分らしくいられる」
「自分のままでいいんだ」
というようなことを話してくれました。
僕自身も、精神科へ来て似た感覚があります。
いろいろな患者さんがいます。
いろいろなスタッフがいます。
個性的な人もいます。
でも、それを必要以上に否定しない空気がある。
「自分らしく働ける場所がある」
ということを、僕は精神科へ来て知りました。

「一般病院では静かな印象だった子が、精神科では本当に楽しそうに働いていました。“合う職場ってあるんだな”と感じた出来事です。」
精神科に向いている看護師・向いていない看護師の特徴を実体験から解説しています↓
「精神科がきつい」と感じたときに考えてほしいこと
もし今、
「精神科がきつい」
「もう辞めたい」
と感じているなら、一度考えてみてほしいことがあります。
本当に、
「精神科だからきつい」
のでしょうか。
それとも、
人間関係がつらいのか。
夜勤が多すぎるのか。
給料が低いのか。
教育体制に不満があるのか。
病院の安全対策に不安があるのか。
仕事内容そのものが合っていないのか。
原因によって、取るべき行動は変わります。
精神科が合わないのか、その病院が合わないのかを分けて考えてみてください。
精神科看護そのものが好きなら、別の精神科病院へ転職することで解決する可能性もあります。
逆に、
最新医療に触れたい。
もっと身体管理を経験したい。
忙しくても技術を磨きたい。
という気持ちが強いなら、一般病院へ戻ることも一つの選択肢です。
大切なのは、
「今の職場がつらい=看護師に向いていない」
と考えないことです。
職場が変われば、同じ看護師でも働き方は大きく変わります。

「僕自身、職場を変えて働き方が大きく変わりました。“自分がダメなんだ”と決める前に、環境が合っているかも考えてみてほしいです。」
精神科への転職で後悔しないために確認したい7つのこと
ここまで読んで、
「精神科に興味はあるけど、やっぱり転職するのは不安だな……」
と思った人もいるかもしれません。
でも僕は、
精神科への転職を怖がる必要はない
と思っています。
僕自身、精神科へ転職する前は、どんな患者さんがいるのか、毎日どんな仕事をするのか、ほとんどイメージできていませんでした。
そして今振り返ると、一つ反省していることがあります。
それは、
転職エージェントから情報をもらうだけで、自分自身では精神科についてあまり調べていなかったことです。
もちろん、エージェントから情報をもらえたことは助かりました。
でも、
「精神科ではどんな疾患を看るんだろう?」
「どんな薬を使うんだろう?」
「急変したらどうするんだろう?」
「精神科未経験者は、どうやって仕事を覚えるんだろう?」
と、自分でも調べておけば、もっと具体的に働く姿をイメージできたと思います。
だから僕は、
「精神科=楽そう」というイメージだけで転職先を決めないことが大切です。
転職する前に、少なくとも次の7つは確認してほしいと思っています。

「僕は最初の精神科転職で、エージェント任せにしていた部分がありました。今なら“自分でも調べて、分からないところをエージェントに聞く”という使い方をします。」
1.どんな患者さんが入院しているのか
まず確認してほしいのが、
「どんな患者さんを受け入れている病院・病棟なのか」
です。
一口に精神科といっても、病院や病棟によって患者層は違います。
僕がこの記事で書いているのは、主に慢性期精神科病棟で働いてきた経験です。
患者層が違えば、
仕事内容も、
忙しさも、
必要になる看護も、
身につく経験も変わります。
だから、
「精神科病院だから」
だけで判断するのではなく、
自分が配属される可能性のある病棟では、どのような患者さんを看ているのか
まで確認してみてください。
2.不穏・興奮時の安全対策と応援体制
僕が精神科未経験者に特に確認してほしいのが、安全対策です。
この記事でも紹介したように、患者さんの病状によっては、不穏になったり、激しく興奮したりすることがあります。
そんなとき、
「一人で対応するのか?」
「近くのスタッフが応援に来てくれるのか?」
「さらに人手が必要なら、院内から応援を呼べるのか?」
こうした体制を知っているだけでも安心感は違います。
僕の現在の職場では、他のスタッフが不穏患者さんに対応していれば周囲も駆けつけます。
さらに危険性が高いと判断される場合には、緊急コールで院内から応援を求められる体制があります。
だから僕は、
「患者さんが不穏になったとき、スタッフはどのように対応していますか?」
と確認しておくことをおすすめします。

「精神科だから怖いかどうかより、“何かあったときに病院がどう守ってくれるのか”を確認するほうが大切だと思います。」
3.身体急変時にどこまで治療できるのか
精神科病院によって、身体疾患への対応範囲は異なります。
病院内で対応できることもあれば、それ以上の治療が必要になった場合に他院への転院が必要になることもあります。
だから、
「身体状態が悪化した患者さんには、どこまで院内で対応するのか?」
も確認しておくといいと思います。
特に一般病院から精神科へ転職すると、
「これが病院にないんだ」
「この治療はここではやらないんだ」
と驚くことがあります。
精神科未経験者ほど、
「急変したら誰を呼ぶのか」
「夜勤中ならどうするのか」
「院内で対応できなければどうするのか」
まで知っておくと安心です。
4.精神科未経験者への教育体制
僕はここもかなり重要だと思っています。
一般病院で何年経験があっても、精神科へ来れば初めてのことがあります。
精神疾患。
向精神薬。
患者さんとの関係作り。
精神症状のアセスメント。
精神科に関係する法律や制度。
電気けいれん療法。
クロザピンなど、特別な管理が必要になる治療・薬剤。
僕自身、
「同じ看護師なのに、また1から覚えることがこんなにあるんだ」
と感じました。
だから、
「プリセプターはいるのか?」
「誰が教えてくれるのか?」
「独り立ちまでどのように進めるのか?」
「精神科未経験者はどのくらいいるのか?」
などを確認してみてください。

「経験年数があるから全部できないといけない、なんて思わなくて大丈夫。僕だって精神科では初めてのことだらけでした。」
5.夜勤はいつから始まり、何人で勤務するのか
精神科へ転職するなら、夜勤体制も確認しておきたいところです。
特に、
「夜勤は何人体制なのか?」
「入職してどのくらいで夜勤が始まるのか?」
「夜勤中に患者さんが不穏になったらどうするのか?」
「身体急変が起きたら、誰に応援を求められるのか?」
といったところです。
日勤ではスタッフが多くても、夜間になると人数は少なくなります。
だからこそ、
夜勤の人数だけでなく、「夜間に何か起きたときの応援体制」まで確認しておくことが大切です。
精神科の夜勤体制・仮眠・急変対応について、実際の勤務を詳しく紹介しています↓
6.病棟見学では「スタッフの表情」を見る
そして僕が病院選びでかなり大切にしているのが、
病棟見学です。
求人票には、
年間休日。
給料。
夜勤手当。
福利厚生。
などが書かれています。
でも、
そこで働く人たちの雰囲気までは求人票では分かりません。
僕なら病棟へ入ったときに、
スタッフは挨拶してくれるか。
表情は暗くないか。
スタッフ同士で自然に会話しているか。
患者さんにどんな声をかけているか。
病棟全体がピリピリしていないか。
そういったところを見ます。
僕はこれまで何度も転職してきましたが、
職場の雰囲気は実際にその場所へ行ってみないと分からない
と感じています。
設備が新しい。
病院が大きい。
給料が高い。
それだけで「いい職場」とは限りません。
求人票では分からない「スタッフの表情・挨拶・患者さんへの接し方」を病棟見学で確認してください。

「僕は病院見学で“働いている人の顔”をよく見ます。余裕がある職場なのか、ピリピリしているのかって、意外と雰囲気に出るんですよね。」
精神科は患者さんとの関係だけでなく、スタッフ同士の人間関係も気になるところだと思います。僕の実際の職場の年齢層や雰囲気、教育環境については別記事で詳しく紹介しています。↓
7.給料・休日・残業・有休消化率まで数字で確認する
最後は、働き方です。
「精神科は残業が少ない」
「精神科は楽」
という情報だけで判断してはいけません。
病院によって違うからです。
僕の現在の職場では残業がほとんどなく、プライベートを大切にできています。
でも、すべての精神科病院が同じではありません。
だから、
年間休日は何日か。
月の平均残業時間はどのくらいか。
有休は実際に取得できているのか。
夜勤は月何回くらいか。
夜勤手当はいくらか。
基本給はいくらか。
賞与は何か月分か。
こうした数字まで確認することをおすすめします。
特に急性期から転職する人は、残業が減ることで残業代も減り、思ったより年収が下がる可能性があります。
「仕事は楽になったけど、給料がこんなに下がると思わなかった」
となれば、それも転職後の後悔につながります。
「精神科だから残業が少ない・給料がいい」と決めつけず、その病院の数字を確認することが大切です。
精神科看護師の給料・夜勤手当・年収について、僕の実例も公開しています↓
自分で聞きにくい情報は、転職エージェントを使って確認する
ここまで読んで、
「そんなに全部確認するの?」
と思った人もいるかもしれません。
僕もそう思います(笑)。
特に、
「有休消化率は本当はどのくらいですか?」
「残業って実際どれくらいありますか?」
「人間関係はどうですか?」
「不穏患者さんへの安全対策は?」
「夜勤中の急変対応は?」
なんて、面接で全部聞くのは難しいですよね。
だからこそ僕は、転職エージェントを「情報収集の道具」として使うのはアリだと思っています。
僕自身、転職活動でエージェントを利用してきました。
ただ、最初の精神科転職を振り返ると、少し任せすぎていました。
だから今なら、
① 自分で精神科について調べる
② 自分が大切にしたい条件を決める
③ 求人票を見る
④ 見学で自分の目で確認する
⑤ 自分では聞きにくい情報をエージェントに確認してもらう
という使い方をします。
エージェントに、
「どこがおすすめですか?」
と全部決めてもらうのではありません。
自分の転職軸を持ったうえで、足りない情報を集めるために使う。
まず「自分が何を大切にしたいのか」を決めてから求人を探すことが大切です。
これが、転職を何度も経験してきた僕が今考える使い方です。

「僕もエージェントを使いました。でも今なら丸投げはしません。“これを調べてほしい”って使います。」
精神科転職前チェックリスト
転職を考えるときは、最低でも次の項目を確認してみてください。

全部が完璧である必要はありません。
大切なのは、
「自分が絶対に譲れない条件は」を満たしている病院を探してください。
精神科の内部情報まで確認してから転職先を決めたい人へ
「求人票だけでは分からない残業・有休・教育体制・病棟の雰囲気などを確認したい場合は、看護師転職サービスを情報収集に使う方法もあります。僕なら1社だけの情報を鵜呑みにせず、求人票・病院見学・自分で調べた情報も合わせて判断します。」
🌟トラパパおすすめ転職サイト3選
まとめ|精神科看護師もきつい。でも「自分に合う職場」なら働き方は変えられる
この記事では、実際に精神科で働いている僕の経験から、精神科看護師のきついところを正直にお話ししてきました。
精神科には、
- 患者さんとの距離が近く、人間関係が濃くなりやすい
- 妄想や付きまといの対象になることがある
- 躁状態や不穏など、精神症状への対応が難しい
- 暴言や興奮状態への対応に怖さを感じることがある
- 隔離や身体拘束など、精神科特有の環境に戸惑うことがある
- 採血・点滴・処置などを行う機会が減る
- 身体疾患へのアセスメントや急変対応に不安を感じることがある
といった、一般病院とは違った大変さがあります。
だから僕は、
「精神科は楽だからおすすめですよ」
とは言いません。
精神科にも、きついことはあります。
それでも僕は、精神科へ転職してよかった
ここまで「きついこと」をたくさん書いてきました。
それでも僕自身は、
精神科へ転職したことを後悔していません。
むしろ、今の僕にとっては自分に合った働き方ができています。
残業はほとんどない。
有休も取りやすい。
家庭の事情にも理解がある。
子どもたちとの時間も持てるようになった。
そして何より、
家族を仕事より優先できるようになりました。
もちろん、精神科だからすべて実現したわけではありません。
同じ精神科でも病院によって働き方は違います。
僕の場合は、
「精神科」と「今の病院」の両方が、自分が大切にしたいものに合っていた。
これが大きかったと思っています。

「精神科だから幸せになれた、というより、“自分に合う職場を見つけられた”ことが大きかったと思っています。」
「楽な職場」を探すより「何を大切にしたいか」を考えてほしい
もし今あなたが、
「今の病院がきつい」
「もっと楽なところで働きたい」
「精神科なら楽なのかな」
と思ってこの記事を読んでいるなら、一度だけ考えてみてください。
あなたは、転職して何を手に入れたいですか?
もっと給料が欲しいのか。
残業を減らしたいのか。
看護技術を磨きたいのか。
最新医療を学びたいのか。
人間関係のいいところで働きたいのか。
子どもとの時間を増やしたいのか。
休日を増やして、自分の時間を取り戻したいのか。
答えは人によって違っていいと思います。
たとえば、最新医療を学び、身体管理のスキルをどんどん伸ばしたい人に、僕は今のような慢性期精神科を無条件には勧めません。
反対に、
「仕事だけで一日を終わらせたくない」
「家族や自分の時間も大切にしたい」
という人なら、条件の合う精神科病院が選択肢になることはあると思います。
大切なのは、
「精神科に転職すること」を目的にするのではなく、
自分が大切にしたいものを大切にできる環境を探してください。
転職は、人生を良くするための手段の一つです。

「“どこなら楽か?”だけじゃなく、“自分は何を大切にして働きたいんだろう?”って、一度考えてみてほしいです。」
100%完璧な職場じゃなくてもいい
僕はこれまで何度も転職してきました。
その経験から思うのは、
100%完璧な職場を探し続けなくてもいい
ということです。
給料はいいけど忙しい。
休みは多いけど、最新医療には触れにくい。
家から近いけど、仕事内容には少し物足りなさがある。
どんな職場にも、良いところと気になるところがあります。
僕の今の職場だって完璧ではありません。
仕事を退屈に感じることもあります。
急性期で忙しく働いていた頃が懐かしくなることもあります。
それでも僕がここにいるのは、
自分にとって一番大切な「家族との時間」を守れるからです。
一番大切なものが満たされているから、多少の不満があっても、
「まぁ、いいか」と思えます。
僕にとって仕事は、人生のおまけ
僕は看護師という仕事が嫌いなわけではありません。
患者さんとの関わりから学ぶこともあります。
看護師として成長できたこともたくさんあります。
この仕事を選んでよかったと思っています。
でも、
僕の人生で一番大切なものは、仕事ではありません。
家族と過ごす時間。
子どもたちの成長。
妻との時間。
自分自身の人生。
それを大切にするために、僕は働いています。
だから僕にとって、
仕事は人生のおまけです。
仕事のために家族との時間を犠牲にするのではなく、
大切な人生を守るために仕事をする。
いろいろな病院を経験して、何度も転職して、僕はようやくそんな働き方にたどり着きました。

「仕事より大切なものがあっていい。僕はそう思っています。」
精神科への転職に迷っているなら、まず「情報収集」からでいい
この記事を読んだからといって、
「よし、精神科に転職しよう!」
と今すぐ決める必要はありません。
むしろ僕は、焦って決めないほうがいいと思っています。
まずは、
自分が何を大切にしたいのか考える。
精神科について調べる。
どんな求人があるのか見る。
病院ごとの給料・休日・残業・教育体制を比べる。
興味のある病院があれば見学する。
そのうえで、
「今の職場に残る」
という結論になったっていいんです。
転職サイトや転職エージェントも、転職することを決めてから使うものではなく、選択肢を知るための情報収集に使うという考え方でいいと思います。
僕自身、転職を繰り返してきたからこそ、
職場を変える前に「自分は何を変えたいのか」をはっきりさせることが大切
だと感じています。

「転職するかどうかは、求人を見てから考えてもいいんです。“今より自分に合う場所ってあるのかな?”くらいから始めてもいいと思います。」
自分に合う職場があるのか、まず調べてみる
もし、
「残業を減らしたい」
「家族との時間を増やしたい」
「精神科の求人を一度見てみたい」
「今より自分に合う病院があるのか知りたい」
と思ったなら、まずは求人情報を比較してみてください。
そのときは給料だけを見るのではなく、
休日・有休・残業・夜勤体制・教育体制・患者層・安全対策・職場の雰囲気
まで確認することをおすすめします。
自分では聞きにくい情報があれば、看護師転職サービスを使って確認してもらう方法もあります。
転職するかどうかを決めるのは、
情報を集めてからでも遅くありません。
「自分に合う精神科求人があるか、まず情報収集してみる」↓
🌟トラパパおすすめ転職サイト3選
最後に、読者へ一言だけ。
精神科にも、きついことはあります。
でも、
きついことが一つもない職場を探す必要はないと僕は思っています。
あなたが大切にしたいものを、大切にできる職場。
そこで働くことで、
「仕事だけじゃなく、自分の人生もちゃんと大切にできている」
と思える職場。
そんな場所を探してみてください。
僕は何度も遠回りしました。
でも今は、
家族との時間を大切にしながら、看護師を続けられています。
あなたにも、あなたに合った働き方がきっとあると思います。

「仕事も大事。でも人生はもっと大事。自分に合う場所で、長く看護師を続けていきましょう。」

